2026年01月25日

宇田川抱青【2】‥‥独尊を貫く陶芸家1

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白萩の灰被に挑む

「次は茶碗や徳利などに本物の萩灰被をやってみないか」と問いかけてみた。

「小さいものは無理ですよ。土を固めて‥‥大き目で刳貫みたいなことしないと無理ですよ」と抱青は言う。

 一般的に花器や水指などの安定感のある作品は薪が少々当たってもビクッともしないが、轆轤挽きの茶碗や徳利など小さな作品は安定感もなく倒れたり破損する。

白萩釉は枇杷釉など地釉を掛けたものより高温で焼かなくてはならない。

このことから焚口近くに置かれた白萩の作品から萩窯変や灰被りが生まれたのであろう。白萩釉が溶けだした頃、赤松の割木で攻め焚きをする。勢いあまって器に当たって黒く炭化し、これが溶け出した。

焼きあがった調子のよい作品は、青黒い灰を被った強烈な印象を与えるからだ。

宇田川抱青作 「萩灰被花入」

まず初期の頃から挑んできた「萩灰被 方壺」である。

陶土を叩き、刳り貫いてから口作りした作品。薪が当たるであろう火前の作品は重量があって安定感のある作品を置いた。

刳り貫きだと強度があるから、攻め焚きによる強烈な赤松の割木の投げ入れにも屈しないからだ。

この「手桶花入」も水をあまり加えず土の塊から刳貫の技法で作られた。

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刳り貫きによる灰被手付き花器

窯詰の時、登窯の一の間の火床に作品を置く。白萩釉はまず溶け出して自然釉が掛かりながらこの徳利のように窯変してくる。

抱青 萩窯変徳利

攻め焚きの頃、一の間の横くべに移り、細めの割木を放り込んだ。

火床におかれた作品が赤松の割木に埋もれて、燠が溜まった跡が黒く炭化してくる。

抱青は天山山脈(天山山脈 – Wikipedia)に憧れをもっていた。それほどまでに言うのならいつか一緒に行こうと約束した。それゆえ花器では多くの「天山」シリーズを制作している。

宇田川抱青 白萩灰被花器「天山」

「これぞ灰被りだね。よその窯では焼成中、燠を作品に被せて焼成する窯もあるようだけど、抱青には小細工を使わずに本物の灰被をやってもらいたい。茶碗や徳利などの小さいもの作品も‥‥」

「しかし、どっしりとした水指や花入なら出来ますけど、高台がある茶碗など小さいものは灰に埋まってます」

何度か焼いたが、見込みに燠が溜まり、炭化して黒くなってしまった。

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見込みが炭化してしまった灰被ぐい呑

作品が小型になるほど燠に埋まって茶碗の見込みが真っ黒に炭化してしまったり、薪が当たって壊れてしまうものなどが多かった。

「やはり折角の白萩釉が汚くなりましたね」と納得できない抱青。

「煉瓦を置いて火床より高くすればどうかな。小さなものでも煉瓦の上にのせたり囲ったりして焼いてみて‥‥。伊賀の陶芸家が自然釉のビードロを狙うとき、割木を割り箸のように細くして作品に被せて焼くときれいなトンボの目が徳利やぐい呑にでるというから、割木をできるだけ細くして焚けば、小品の灰被りがとれると思うけど、、、」と頼んでみた。

萩では人為的に薪の燠を被せたものも灰被りと言っているが、窯の中で自然に生まれる灰被りと注文を付けた。

何度目かの失敗ののち、なんとも神秘的な萩灰被茶碗や徳利が登場した。

宇田川抱青 萩灰被徳利

白萩釉の灰被割高台茶碗である。

宇田川抱青作 萩灰被茶碗(十字高台)

ねらい通り見込みに燠が溜まらずに溶け出して美しい窯変が生まれた。強烈な焼き上がりだが、茶心に合うような品格さえ随所に見えた。

宇田川抱青「天山」
抱青 萩灰被掛花入

宇田川抱青【1】…群れずに独尊を貫く陶芸家Ⅰ | 黒田草臣「陶 奈なめ連れづれ」

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