計り知れない曜変天目の深窓
汝窯・定窯・建窯は『宋瓷』の代表格。
この中国文化の黄金時代に君臨したのが“風流天子”と言われた徽宗皇帝であった。
北宋末(1101~25)、青瓷・白瓷・天目を宮廷專用品として徽宗は貢納させている。
徽宗はなんと10代で端渓の水抗硯を知り尽くし、最良の下岩硯を貢硯させた。18歳で北宋の八代皇帝となり、書道では楷書の書風「痩金体」を考案した。さらに絵を描いて写実的な「院体画」を完成させた芸術家でもある。我が国に渡って東山御物の最高位に置かれた「桃鳩図」(1951年、国宝指定)は25、6歳の時に描いている。
抹茶法の起源ともいわれる『大観茶論』は徽宗が大観元年(1107)に若くして著したものだが、盞の項では兎亳盞(禾目天目)がもっとも茶の白さが美しく見えるとした。
徽宗御用達の北苑御焙茶山で採れた天然の龍団茶葉を蒸して団茶にしてから粉末にした。これを竹製の茶筅で泡立てている。
禾目天目も建窯の龍窯で焼かれたが、唐代には青磁を焼成した窯。(建窯の物原に青磁の陶片を見ることができた。)この徽宗の意を受けて天目専門の窯へと変化し、南宋代には油滴天目や曜変天目を生んだ。この間、何といっても最上位とされたのが曜変天目である。

同じ鉱山で採集した火山性の輝緑凝灰岩を粉砕して緻密な釉薬にしたといわれている天目釉。同じ胎土を使用して施釉した建盞の中でたまたま岩石に含まれる特別な鉱物が含まれていて龍窯で変質してあの曜変を生んだのであろう。謎の多い曜変天目。三碗ある国宝の曜変天目茶碗の釉調は同じものがないから神秘的な輝きも偶然にできたとしか考えられない。
この世にはいま一つ耀変天目と呼ばれる前田家伝来の茶碗(重文・ミホミュージアム)が現存している。細かな結晶が宇宙の星文を思わせる私の好きな茶碗だ。

瀬戸は『稲葉天目』を永く追及してきたが、この“曜変”とは一線を画す“耀変“も得意領域にしたい考えだ。
建窯付近にある土を手に入れて、慣れ親しんでいた美濃の土をブレンドして天目用の粘土をつくる。
瀬戸曜変を生み出す灯油窯はガス窯や電気窯より薪窯に近い優れもの。
燃焼室からの薪や木炭による冷却還元ができる。燃料の投入を止めると1250℃から900℃くらいまで一気に下がりやすいが、瀬戸は1000℃まで時間を掛けて序冷する。
それらの際どさが輝く曜変天目を生み出してくれるようだ。
黒田草臣
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【直木美佐 遺作展】Memorial Exhibition of NAOKI Misa

開催期間:2025年5月14日(月) ~ 2025年4月26日(土)
魯卿あん
魯山人「大雅堂」・「美食倶楽部」発祥の地 魯卿あん‥‥Rokeian
〒104-0031 東京都中央区京橋2-9-9 TEL: 03-6228-7704 FAX: 03-6228-7704
営業時間:11:00~18:00 Email:rokeian-kuroda@jupiter.ocn.ne.jp
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【曜変天目 瀬戸毅己展】Exhibition of SETO Takemi

2025年5月9日(金) ~ 5月18日(日)Exhibition : May 9 to May 18, 2025
Closed on May 15 (Thu)無二の個性豊かな陶芸家とともに歩む
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